本研究の目的は、「光電子放出帯電による半導体製造真空プロセスにおける微粒子除去技術」の実用化に必要な基礎データの集積にある。最終年である本年度は、「UV/光電子放出による微粒子帯電装置」によるZnO粒子とCdS粒子の帯電実験を行い、さらに昨年度に得られたSiO_2の実験結果と共に数値シミュレーション結果と比較検討した。(1)ZnO粒子はZnCl_2を原料に蒸発-酸化反応法で作成した。粒径100〜200nmのアモルファス粒子が生成した。100〜10torrの圧力場での実験結果は、粒子帯電量が粒径、UVランプ数の増加により、また、圧力の減少により増えることを示した。しかし、流量には無関係であった。(2)CdS粒子は、硝酸カドミウムとチオ尿素のエタノール溶液の噴霧熱分解により粒子を合成した。合成粒子の粒径は1ミクロン〜サブミクロンと大きく、減圧装置内での沈着が激しく、減圧場における実験は行えなかった。常圧場では、粒子帯電量はUVランプ数の増加により増えたが、流量には影響されなかった。これら(1)(2)の結果の内、UVランプによる帯電量の増加は、光電子放出による粒子荷電が起こっていることを示し、流量に対して一定であることは、光電子放出がUV照射時間に左右されないことを意味する。(3)「UV/光電子放出による微粒子帯電装置」の帯電現象の数値シミュレーションは、実験の定性的な傾向を説明できたが、定量的な一致は得られなかった。計算に用いた薄膜のUV照射実験から推定した光電子放出量を十分の一〜百分の一に、あるいは粒子濃度を十分の一〜百分の一にすると、実験結果が上手く説明できた。このことから、実験とシミュレーションの不一致の原因として、実際の粒子からの光電子放出量がシミュレーションで用いた値より小さい、あるいは、臨界ノズル(減圧容器への粒子の導入口)における粒子沈着がシミュレーションの値より大きいことが考えられる。
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