1.槽型の液滴分散接触装置を用いた逆ミセル抽出法によるタンパク質の迅速な濃縮回収の可能性について検討した。KC1水溶液とAOT/イソオクタン逆ミセル溶液間におけるリゾチームの正抽出および逆抽出速度を回分式撹拌槽を用いて測定し、それらの速度に及ぼすAOT濃度、撹拌速度、水相と有機相の液量比などの影響を調べた。正抽出は非常に速くほぼ1分で、また逆抽出は正抽出に比べて遅いが5分以内で平衡状態に到達し、リゾチームは迅速に濃縮回収されることがわかった。また、種々の条件下におけるリゾチーム濃度の実測経時変化を、筆者らの提案した平界面を通しての抽出モデルを適用した物質移動モデルによりほぼシミュレートできることが示された。 2.塔型接触装置として回転円板抽出塔を製作した。この抽出塔および回分式撹拌槽を用いて、AOT/ヘキサン逆ミセル系によるアミノ酸フェニルアラニンの正抽出および逆抽出操作を種々の条件下で行った。撹拌槽では正・逆抽出ともに何ら問題はなかったが、塔操作では、フェニルアラニンが逆ミセル有機相から回収水相へあまり回収されず、現段階では、逆抽出操作に回転円板抽出塔は不向きであり、改良、検討の余地が今後に残された。 3.逆ミセル抽出法と乳化液膜法の両者の特徴を兼ね備えた新しい分離法を構築することを目的に、AOT逆ミセルを担体とした乳化液膜系の創製に適した溶媒と非イオン性界面活性剤の組み合わせを探索した。抽出挙動と液膜形成状態の両面を考慮した場合、ケロシンとスパン60の組み合わせが今までのところ最適である。
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