1. AOT逆ミセル系によるフェニルアラニン(Phe)の抽出分配挙動に及ぼす溶媒および非イオン性界面活性剤の影響を調べた。Pheの正抽出、逆抽出ともに、4種類の溶媒(イソオクタン、ヘキサン、ヘプタン、ケロシン)による影響はほとんど見られなかった。非イオン性界面活性剤(スパン80、スパン60)の添加は正・逆抽出率の低下をもたらし、その程度は溶媒(ヘプタン、ケロシン)によって異なり、スパン60含有系が正抽出、逆抽出ともに比較的良好であることが判明した。 2. Pheの正抽出実験を回分式撹拌槽を用いて行い、正抽出速度に及ぼす上記4種類の溶媒の影響を調べた。溶媒による影響は見られなかった。また、ほぼ5分で平衡抽出率に到達することより、迅速なPheの抽出が可能であることが示された。 3. 撹拌槽を用いて、Pheの正抽出および逆抽出の連続操作実験を行い、溶媒、水相と有機相の流量および流量比など操作因子の影響について検討した。正抽出および逆抽出いずれの操作におても、流出液の水相と有機相は、操作した条件下ではほぼ平衡状態に到達していることがわかった。本結果と前年度の回転円板抽出塔による結果との比較より、アミノ酸・タンパク質の逆ミセル抽出操作には、槽型接着装置を用いたミキサー・セトラー操作が有用であると思われる。 4. 逆ミセル抽出法と乳化液膜法の両者の特徴を兼ね備えた新しい分離法を構築することを目的に、AOT逆ミセルを担体とした乳化液膜によPheの分離・濃縮実験を種々の条件下で行ったが、Pheの原料相から回収相への移動はほとんど起こらなかった。この原因解明に向けて引き続き研究を行うつもりである。
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