研究概要 |
C-C結合を形成する有用な有機合成反応であるマイケル付加とその類似反応に触媒活性を示す固体触媒を開発することを目的に、種々の固体塩基を調製し、クロトン酸メチルの二量化、不飽和カルポニル化合物へのニトロメタンの付加、および、アルコールとアクリロニトリルびシアノエチル化に対する触媒作用を研究した。 クロトン酸メチルの二量化に対しては、種々検討した固体塩基のなかで、MgOのみが高活性を示した。反応機構としては、アクリル位の水素の触媒上の塩基点による引抜きにより生じたアニオンが他のクロトン酸メチルのβ位のCに付加し、二重結合移行して生成物を与える機構であることを明らかにした。MgOは吸着力が強すぎずまた、活性点の密度が大きいことが高活性を示す理由と推定した。 α,β一不飽和力ルポニル化合物であるクロトン酸メチル、ブテン-2-オン、2-シクロへキセン-1-オン、クロトンアルデヒドへのニトロメタンの、マイケル付加に対しては、アルミナ担持KFおよびKOH触媒が高活性を示した。反応機構を明らかにするとともに、反応基質の反応性は、β一位炭素の電荷に依存することを明らかにした。 アルコールとアクリロニトリルからアルコキシプロパンニトリルを生成するシアノエチル化に対して、アルカリ土類酸化物および水酸化物、アルミナ担持KFやKOH、希土類酸化物が高活性を示すことを明らかにした。反応性は触媒の塩基の強度とアルコールの種類によって決り、塩基性の弱い触媒では、プロトンを放出しやすいアルコールが反応性が大きく、塩基性の強い触媒ではその逆になることがわかった。固体塩基触媒は水蒸気と二酸化炭素に触れると活性点が被毒を受けるのが実用上不都合な点であるが、シアノエチル化に対しては、このような被毒効果がみられなかった。これは、アルコールと固体塩基との相互作用が非常に強いことに因ると結論ずけられた。
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