研究概要 |
1. 修飾担持パラジウム触媒を用いたチグリン酸のエナンチオ面区別水素化 昨年度の研究より不均一系触媒によるプロキラルアルケンのエナンチオ面区別水素化では,パラジウム金属を用いたときに最も高い立体選択性が得られることが明かとなった.本年度は触媒調製法として(i)パラジウムアセチルアセトナートを分解する方法 (ii)パラジウムを含浸後に分解する方法 (iii)塩化パラジウムを含浸後に水素化ホウ素ナトリウムで還元する方法,を用い,チグリン酸のエナンチオ面区別水素化を行った.担体の種類,担持量,触媒の水素処理温度,水素化ホウ素ナトリウムの濃度などの種々の触媒調製条件を検討した結果,塩化パラジウムを含浸後に水素化ホウ素ナトリウムで還元する方法により調製した触媒を用いた時に,最も高い光学異性体過剰率が得られる事が明らかとなった. 2. 修飾担持ニッケル触媒を用いたアセト酢酸メチルのエナンチオ面区別水素化の検討 昨年度の研究から担体の種類が光学収率に大きな影響を与えることが明かとなったが,この担体の影響をさらに検討するため,種々の担体から調製した触媒のX線結晶回折による結晶子径の測定,透過型電子顕微鏡による観察を行った.その結果,約50nm程度のニッケル結晶子径を持つときに高い光学収率が得られることが明らかとなった.また,この結果を元に触媒水素化処理温度を500℃とすることにより,これまで60%程度の光学収率しか報告されていない含浸法により調製した担持触媒においても,80%以上の光学収率を得ることができるようになった.
|