研究概要 |
不均一系触媒によるプロキラルケトン,プロキラルアルケンの立体区別水素化反応において,高い立体選択性を持つ触媒の開発を行った. 1. プロキラルアルケンのエナンチオ面区別水素化 基質としてチグリン酸を用い触媒調製条件,反応条件の検討を行った.Pd金属を用いたときに最も高い選択性が得られることが明かとなった.触媒調製法としては,(i)Pdアセチルアセトナートを分解する方法(ii)硝酸Pdを含浸後に分解する方法(iii)塩化Pdを含浸後に水素化ホウ素ナトリウムで還元する方法,を試みた.担体の種類,担持量,触媒の水素処理温度,水素化ホウ素ナトリウムの濃度などの種々の触媒調製条件を検討した結果,塩化Pdを含浸後に水素化ホウ素ナトリウムで還元する方法により調製した触媒を用いた時に,最も高い光学異性体過剰率が得られる事が明らかとなった. 2. プロキラルケトンのエナンチオ面区別水素化 酒石酸修飾担持Ni触媒を用いたアセト酢酸メチルのエナンチオ面区別水素化において,触媒調製法としてNiアセチルアセトナートを熱分解する方法を開発した.従来修飾担持Ni触媒では光学収率が約60%と低い値しか得られていなかったものが,この方法によると最高の光学収率が86%と飛躍的に向上した.種々の担体を検討した結果,住友化学化学工業製スミコランダム(結晶性の高いα-アルミナ)を用いたときに高い光学収率が得られることが明かとなった.担体の影響をさらに検討するため,種々の担体から調製した触媒のX線結晶回折による結晶子径の測定,透過型電子顕微鏡による観察を行った.その結果,約50nm程度のNi結晶子径を持つときに高い光学収率が得られることが明らかとなった.また,この結果を元に触媒水素化処理温度を500℃とすることにより,これまで60%程度の光学収率しか報告されていない含浸法により調製した担持触媒においても,80%以上の光学収率を得ることができるようになった.
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