金属酸化物触媒は工業的に重要な位置を占めている。担持金属酸化物触媒では、担体、担持量により活性、選択性が大きく異なる場合が多い。これは、表面金属酸化物種の構造、集合状態の変化によると推定されているが、十分には明らかになっていない。金属酸化物触媒の触媒作用をより深く理解し、触媒設計の指針を得るためには表面金属酸化物種の構造と触媒作用について明らかにする必要がある。本研究では、構造既知の均質な金属酸化物をゼオライト細孔内に合成し、その触媒作用を明らかにしようとした。また、酸化物とともに重要な金属硫化物についても同様な試みを行った。Mo酸化物、Fe酸化物、Co硫化物、Mo硫化物およびCo-Mo複合硫化物クラスターの構造と触媒特性について検討を行った。クラスターの構造は、X線吸収スペクトルを用いて検討し、FEFFにより解析した。金属力ルボニルを出発物質として用い、種々の構造をもつゼオライトを用いることにより構造の制御された一連の金属酸化物および硫化物クラスターの合成に成功した。Mo酸化物クラスターに関しては、エタノールの酸化活性は、Mo単原子からなる酸化物種では極めて低いが、二量体では増大し、さらに四量体ではさらに20倍の活性となり、Mo酸化物のクラスターサイズの増大とともに飛躍的に大きくなることを見いだした。Fe酸化物クラスターは、ソーダライトケージ内でFe_6Oxクラスターを形成していることを明らかにした。Fe酸化物クラスターは、NOx除去触媒として高活性を示した。さらに、Co-Mo複合硫化物クラスターはCo_2Mo_2S_6クラスターとして細孔内に存在し、キュバン型構造をもつことを見いだした。クラスターのCoサイトのみが水素化脱硫活性に関与していることを明らかにした。
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