負電極触媒上で2-プロパノール脱水素、正極触媒上でアセトン水素化を進行させ、高分子電解質膜の両側に生じさせた水素濃度差から電力を得る熱電変換システムは、沸騰加熱下高いスピルオーバー能を示す炭素担持脱水素触媒がその開発の鍵を握っている。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体を高表面積活性炭から窒素流通下170℃1h磁気撹拌して得た拡散法調製金属パラジウムは、径のよく揃ったナノサイズ粒子が炭素顆粒上に一様に分散していて、2-プロパノール脱水素活性も水素スピルオーバー能も優れたものであったが、触媒金属種はパラジウム単独ではなくそれにルテニウムを複合させると脱水素活性もスピルオーバー能もさらに向上することを見出したので、乾式拡散法による金属パラジウム微粒子へのルテニウムの複合化について詳しく検討した。 あらかじめ炭素顆粒上に一様に分散させたナノサイズパラジウム粒子を水素雰囲気下、トリルテニウムドデカカルボニル錯体とともに加熱撹拌し、配位子脱離を伴う分解と面心立方品パラジウムへのルテニウムの固溶合金化させると、2-プロパノール脱水素活性ならびに水素スピルオーバー能の顕著な向上が認められた。分子性金属錯体の乾式拡散法による複合化調製処理はこれ迄いくつかのバイメタリック触媒に対して試みられ、粒子レベルでの成分組成を制御することに成功してきたが、Pt-Ru系も新たに一例として加えることができた。 2-プロパノール/アセトン系ばかりでなく水素/アセトン系についても燃料電池としての機能特性が電子総合技術研究所エネルギー部で解析され、それぞれ電流-電圧曲線が求められている。活性化分極が小さい利点と開路起電力のなお小さい欠点が確認されたところである。
|