研究概要 |
固体酸触媒を用いて高温で炭化水素の反応を行うと、コーク析出による細孔閉塞などのため、触媒活性は低下する。活性低下の速度は、触媒の酸特性、反応環境、および細孔構造などに相関しているはずである。しかし、細孔構造と活性低下との関係を系統的に調べた研究はない。本研究の目的は、細孔径だけが異なるアルミノシリケートMCM-41を合成し、これらおよび比較のためのゼオライトを触媒に用いた各種の炭化水素の反応を行い、コーク析出による触媒活性低下と細孔径との関係を明かにすることである。 Si/Al比が約50と一定で、細孔径だけが3.0〜4.6nmの範囲で異なる数種のアルミノシリケートMCM-41を合成した。オクタンおよび2,2,4-トリメチルペンタンの分解反応を行ったが、活性が低すぎるためコーク生成と活性低下速度を測定することはできなかった。一方、芳香族系のコークが生成しやすいと推定さられる1,3,5-トリイソプロピルベンゼン分解とを行ったところ、コーク生成による活性低下速度を測定することができた。触媒の細孔径とコーク生成による活性低下との関係は、細孔径が小さいほど活性低下速度が大きいという結果にはならなかった。また、細孔径がきわめて小さいYゼオライトの方が活性低下速度が小さく、細孔径が小さくて反応物質が細孔に進入することが出来ないZSM-5ゼオライトの活性低下速度とMCM-41とは同程度であった。以上のことから、MCM-41のコーク生成による活性低下は、コークによる細孔閉塞ではなく、単に表面のファウリングによるものと推定される。従って、この程度以上の細孔径を有する固体酸触媒においては、細孔径と活性低下は相関しないと結論した。
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