今日では、電灯的分子軌道法と密度汎関数法の差違は理論面でも応用綿でも小さくなりつつある。すなわち、Hartree-Fock法をHartree-Fock汎関数を用いた密度汎関数法と見ることもできるし、密度汎関数法を広い意味での分子軌道法の一形態と見ることもできる。量子化学的手法で、金属、金属酸化物の表面及びバルクの電子構造を求める場合、HOMO-LUMOの縮退がしばしば起こるので、密度汎関数法がより適している。今年度は密度汎関数法を用いて、周辺部の影響を排除したスラブモデルで結晶軌道計算を行うためのプログラムの整備を行った。特に、遠距離からの静電ポテンシャルをカットする方法について工夫した。ここでは、通常のEwald法ではなくEvienにより提案されている陽イオンと陰イオンとのクーロン相互作用を、電気的中性すなわち化学量論比を保存しながらカットする方法を採用した。 シリカのモデルとしてβ-cristobaliteを用いて、基底関数系の選択などの準備を行った上で、単位胞の大きさを徐々に大きくして行ったときの、状態密度や原子上の電子密度などを収束性を調べた。基本的方法は巨大な単位胞を用いた、Γ点での1点計算であり、最近接の単位胞(3次元では27個)との相互作用のみを考慮する。メモリおよび使用ディスク容量を節約するようにプログラムの書き換えを随時行った。さらに、計算の規模を小さくするために基底関数楔の選択などを行った上で、ZSM-5結晶の単位胞(288原子)を用いた計算を行い、状態密度や原子上の電子密度などを情報を得た。
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