研究概要 |
本研究では,不定胚を経由するカルス再分化系の効率化を目標として,二つのことを試みた。 1) リボフラビン添加による不定胚分化の促進 a) リボフラビンによる2,4-Dの濃度依存的な分解は,光強度に強く依存すること,分解生産物としてルミクロムが生成され,この物質には触媒作用がないこと,FAD,FMNにも触媒作用があることが示された。 b) ニンジン培養細胞系に対するリボフラビンの添加の結果,細胞内外の2.4-D減少速度の向上,不定胚形成効率の明確な向上が観察された。 c) リボフラビンの有効利用,オーキシン濃度の適度な制御の観点から,リボフラビンを疎水的なアルキル鎮を付加し,疎水性担体に固定化したオーキシン分解用のビーズ(RFビーズ)製作した。 d) RFビーズは,少量の添加では不定胚形成促進効果があるものの,大量添加ではむしろ阻害的に働く事が明らかとなった。この阻害の原因として,発生した活性酸素による細胞のダメージが示唆された。 e) 光照射によるオーキシン分解を培養槽外で行なうシステムを構築し,その有効性を明らかにした。 2) 不定胚分化過程でのガス成分分析と気相交換方法の検討 a) ニンジン培養細胞からの不定胚分化過程で,培養器ヘッドスペースに蓄積するガス成分と培養条件との関係を検討し,エチレンに拠る阻害,二酸化炭素によるその抑制を示唆する結果を得た。 b) イネカルスの再分化系においては,エタノール,アセトアルデヒド等の微量成分がヘッドスペースに蓄積し.阻害要因となりうることを示した。しかし,ガス中の分化促進物質を具体的に確認するようなデータは得られなかった。
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