研究概要 |
本研究では独立栄養生物として窒素固定型の藍藻および従属栄養生物として大腸菌に着目し、この両者から構成される人工の共生系を構築し、新しいバイオプロセスの最適化・評価を行うことを目的とした。 窒素固定藍藻として淡水性藍藻Anabaena sp.PCC7120,また従属栄養生物として大腸菌Escherichia coliを用いた。これらを貧栄養環境下、光照射下で回分培養を行なった。その結果、大腸菌単独では細胞数は徐々に減少していくのに対して、藍藻と共存することにより、その細胞濃度は定常に保たれた。これは、藍藻によって固定された炭素源ならびに窒素源が培養液中に放出され、これを大腸菌が増殖に利用できたためと考えられた。そこで、Anabaena sp.PCC7120と大腸菌Escherichia coliDH5αから構成される人工共生系を長期安定に保持することを検討することを目的に疑似連続培養を試みた。特に、フィールドでの実験を想定して、明暗の光照射サイクル下での培養を行なった。系の希釈率には藍藻の比増殖速度を考慮に0.18day^<-1>とした。その結果、大腸菌の細胞濃度は200時間以上にわたって、10^7CFUml^<-1>程度に保たれ、またその間藍藻の細胞濃度も一定であった。 さらに、人工共生系において藍藻からの従属栄養生物への積極的なエネルギー供給方法として両代謝系の架け橋となるメタボリックインターフェイスを開発することを目的にシアノファージの応用を試みた。ここではAnabaena sp.に感染する溶原性シアノファージ、AN10を用いた。その結果、藍藻の培養液では大腸菌は10^7CFUml^<-1>程度までしか増殖しないのに対し、シアノファージ感染液では10^8CFUml^<-1>まで増殖することが見いだされた。このことから、シアノファージは有効なメタボリックインターフェイスとして利用できることが明かとなった。
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