研究概要 |
蛋白質分子ライブラリーは通常生細胞を用いた系で構築される。そのためライブラリーサイズは遺伝子の導入効率に、またライブラリーの物理的密度は培地プレートの使用等により制約される。研究代表者らは、PCRとin vitro転写・翻訳系を用いて、変異遺伝子のクローニング・発現をすべてin vitroで行うシステムを構築した。まずクラゲ蛍光蛋白質(Green Fluorescent Protein,GFP)遺伝子を各チューブあたり一分子にまで希釈し、これを80サイクルのPCRによって増幅した。あらかじめ鋳型遺伝子に導入しておいたランダムな3塩基の配列の決定によって、増幅したDNA断片が一分子の鋳型遣伝子に由来したものであることを確認した。また、上述のPCRによって"クローニング"した遣伝子を、直接、in vitro転写・翻訳系に用いてGFPを合成することに成功した。さらに、野生型GFPと変異GFP(S65T)を混合したDNA分子集団から蛋白質分子ライブラリーを構築し、本システムによって変異蛋白質分子のスクリーニングが可能であることを実証した。 この新規なライブラリー構築システムは、マイクロスケール化が容易であり、ライブラリーサイズを飛躍的に増大させることができる。さらに様々なアッセイ系に適応できるため、様々な蛋白質分子の迅速な分子進化が可能となる。 関連して、PCR産物からの大腸菌抽出液を用いた転写翻訳共役反応系の最適化を行った。さらにPCRを用いて部位特異的にコンビナトリアル変異を導入し、無細胞蛋白質合成系により直接変異蛋白質を多種類合成する手法を開発した。この技術も蛋白質の分子進化の速度を大幅に加速することができる。
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