還元能を有するビタミンC(アスコルビン酸)は水溶性であるため、体内における吸収効率が低い。そこで、微水系または無水系でのリパーゼによる縮合または転移反応を利用して、経皮吸収を促進することが知られている中鎖脂肪酸によりビタミンCをアシル化することにより、脂溶性並びに界面活性を付与すると吸収効率を向上させることができると期待される。低含水率の有機溶媒中でビタミンCを効率的にアシル化する酵素の検索を行い、Candida antarctica起源のリパーゼが高い触媒能を有していた。固定化した同酵素は比較的短時間の使用では60℃の高温でも顕著な活性の低下を示さなかった。まず、縮合反応および転移反応によるビタミンCのアシル化の得失について比較したところ、縮合反応の方が高い反応率が達成された。また、反応溶媒の影響について検討したところ、アセトニトリルが最も適切であることを見出した。本酵素は炭素数6〜12の脂肪酸のいずれに対してもほぼ同程度の反応性を示した。アセトニトリルの含水率が収率に及ぼす影響を検討したところ、含水率が低いほど収率が向上した。また、縮合反応の平衡定数を決定し、任意の反応液組成における平衡収率を予測する方法を確立した。中鎖脂肪酸による親水性物質の腸管吸収促進機構などに関して小腸上皮様に分化したCaco-2培養細胞を行いて検討し、促進効果には中鎖脂肪酸の界面活性剤としての性質が深く関与していることを示すとともに、細胞の損傷の程度についても評価した。そこで、ラウリル酸でアシル化したビタミンCの界面活性剤特性を測定したところ、比較的強い界面活性能を有しており、腸管吸収が促進される可能性が示唆された。
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