二酸化炭素の回収に用いた微細藻類の有効利用法のひとつとして、藻体バイオマスから化石燃料の代替エネルギーとして期待される水素を効率的に生産するシステムの開発を目指して研究を行い、以下に示す成果を得た。 1.海水を希釈に用いるし尿処理場から得た耐塩性を有する微生物群(海水環境由来の微生物)の中から、光合成によって藻体バイオマスに蓄積される主要物質であるデンプンから直接水素を生産することができる微生物共生体を選抜することに成功した。 2.この微生物共生体を構成する微生物を単離して16SrRNA配列を解析することにより、共生体が既知の細菌と相同性の高い配列を持つ3種の異なった細菌株によって構成されることを明らかにした。 3.これらの株のデンプン分解能や水素生産能を詳細に検討し、デンプンを分解・基質化する能力を持つ株と、デンプン分解物から水素を生産できる株を特定した。 次年度は、この微生物共生体を用いて、実際に藻体バイオマス中に蓄積されたデンプンからの効率的な水素生産を目的に以下の検討を行う。 1.デンプン分解と水素生産を担う微生物株によって構成されるモデル共生体を用いて、温度、pH、光照射、培地成分、構成菌の比率など、デンプンから効率的に水素を生産するための条件の最適化を行う。 2.この微生物共生体を用いて、種々の標準藻株や実際に排水処理などから得られる余剰藻体バイオマスを材料とした水素生産を試み、このシステムの藻体バイオマスの有効利用技術としての有用性を評価する。
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