二酸化炭素の回収に用いた微細藻類の有効利用法のひとつとして、藻体バイオマスから化石燃料の代替エネルギーとして期待される水素を効率的に生産するシステムの開発を目指して研究を行い、以下に示す成果を得た。 1. 海水を希釈に用いるし尿処理場から得た耐塩性を有する微生物共生体により、高い二酸化炭素固定能を持つ微細藻類細胞中のデンプンから直接水素を生産するに成功した。また、この共生体からデンプン分解により有機酸を生産する細菌と、有機酸を基質として水素を生産する光合成細菌を分離し、これらを組み合わせた混合培養系においても、同様に藻体バイオマスから水素を生産できることを確認した。さらに、この共生体の水素生産能は、海水と同等の3%の塩化ナトリウム存在下で最も高い値となった。 2. 既知の乳酸菌と光合成細菌からなる混合培養系によって、先の微生物共生体よりも高い藻体バイオマスを基質とする水素生産量が得られた。さらに、pH、光照射、培地成分、構成菌の比率などの条件の最適化を行うことにより、藻体バイオマス中のデンプンからの高い水素への変換率および変換速度が得られた。また、3%の塩化ナトリウム存在下でもこの混合系の高い水素生産能は維持された。 以上の検討から、デンプンを分解して有機酸を生産する発酵細菌と、光合成細菌の機能を利用することにより、二酸化炭素固定により藻体バイオマス中に蓄積されるデンプンを効率よく水素へ変換できることが示された。また、これらのシステムは安価な海水を基本培地として利用できることから、低コストで運用することが可能であると考えられる.
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