研究概要 |
天然の多環含硫化合物という共通点をもち応用的にも基礎的にも重要な化合物であるビオチンとジベンゾチオフェンにおける炭素-硫黄結合(C-S-C)の形成と開裂反応を触媒する酵素(ビオチン合成酵素,DBT脱硫酵素系)について酵素化学的・タンパク質化学的特性と反応機構の解明を中心とした研究を行い今年度は次のような結果を得た。 (1) 脂肪酸代謝において重要であるのみならず,アミノ酸発酵の制御因子として,また遺伝子工学での高感度検出試薬として重要な役割を果たしているビオチン(ビタミンH)の生合成における最終段階の酵素ビオチン合成酵素(BioB)の反応に必須の反応促進因子をBacillussphaericusの野生株の無細胞抽出液から硫安分画、Q-Sepharose,Butyl-Toyopearl,Source30-Qカラムクロマトグラフィーを用いて精製を行った結果、熱失活せず分子量10,000の限外ろ過膜を通過する低分子画分(LF)と熱失活する(HF)に分画することができた。LFもHFもそれ自身では促進活性を示さなかったが、この両者を同時に添加することによってビオチン合成酵素活性は発現した。このHFには複数の促進活性を示すタンパク質が含まれていると考えられたので今後さらに精製を進めてそれらの組み合わせによってのみビオチン合成酵素活性を発現するタンパク質が見いだせるものと考えられた。 (2) 石油中に存在するジベンゾチオフェン(DBT)は石油の燃焼の際に亜硫酸ガスを生成し酸性雨の原因物質となることから地球環境問題のターゲット物質である。DBTを単一硫黄源として増殖できる細菌Rhodococcus erythropolis D-1 の無細胞系からDBTオキシゲナーゼ(DszC)を精製すると共に結晶化の条件を検討して板状の結晶を得ることにも成功した。さらに)DBT脱硫代謝系の最後の段階を触媒するスルフィナーゼ(DszB)をDBT脱硫菌R.erythropolisKA2-5-1株より各種カラムクロマトグラフィーにより高度に精製することができた。
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