研究概要 |
スポンジ様の多孔質材であるポリウレタンフォーム(PUF)を培養担体として初代ラット肝細胞を培養すると,そのPUF孔内において直径約100μmの球状細胞集塊であるスフェロイドを形成した。これまで用いられてきた単層培養では肝特異的機能は生体外で速やかに消失していたのに対し,このPUF/肝細胞スフェロイド培養では静置培養下で10日間以上良好に維持した。特に,解熱鎮痛剤であるアセトアミノフェンをグルクロン酸および硫酸抱合した化合物に変換し,生体内での肝臓における代謝経路を生体外で再現することに成功した。また,局所麻酔剤であるリドカインもN-脱エチル化により,モノエチルグリシンキシリダイド(MEGX)へと代謝され,アセトアミノフェンと同様な結果が得られた。肝細胞スフェロイドのこれらの機能は単層培養肝細胞の1.5〜2.0倍のレベルを培養10日間良好に維持していた。 また,リドカインの肝細胞毒性においても肝細胞スフェロイドは耐性を示し,リドカイン濃度が8mMの場合に単層培養肝細胞が全て死滅したのに対し,肝細胞スフェロイドは50%以上の生存率を示した。 以上の結果から,本培養方法は動物実験代替法である薬物代謝シミュレーターとして有望であることが示された。
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