研究概要 |
医薬品開発の一つの評価項目として、新規化合物が生体肝臓内の薬物代謝酵素活性の誘導や阻害に与える影響が動物実験によって評価される。そこで動物実験によって研究報告例が多い代表的な反応として、3-メチルコラントレンによる薬物代謝酵素活性の誘導を取り上げ、肝細胞スフェロイドの応答を評価した。その結果,ラット肝細胞スフェロイドは培養2週間目でも薬物代謝酵素活性が誘導されることを見い出した。 また,医薬品開発においては定性的評価のみならず、薬物の代謝速度(定量的)の評価も重要である。通常,この評価は実験動物への直接投与や灌流させている摘出肝臓への投与による経時的なサンプリングによって評価される。本研究では,細胞への酸素や栄養素の供給や代謝老廃物の除去など良好な物質交換が行える培養環境のもとで薬物代謝速度を評価するために、PUFに充填した肝細胞スフェロイドを灌流培養する装置を開発した。個の装置は摘出肝臓の灌流培養を模倣した装置として考えることができる。本装置内にラット生体肝臓の1/25の細胞量(約0.4g)を充填し,モデル薬物(リドカイン,アセトアミノフェン)の代謝速度を測定した結果,他の研究者がラットの全肝臓(約10g)を用いて測定した結果と比べ,単位細胞量当たりほぼ等しい代謝速度が得られ、この装置を用いることによって少ない細胞量で生体肝臓内の薬物代謝速度を予測できる可能性が示された。
|