目的物質を分離・精製する場合、いわゆる物性の他に、溶液中での分子の存在状態の違いを認識する必要があり、それが生理活性の有無に関係する。タンパク質分子の凝集はリフォルディングにおいては失敗となるが、ダイナミック膜の形成に必要である。分子レベルの凝集は、晶析の第一段階でもある。本研究ではタンパク質の存在状態の認識とバイオセパレーションへの応用の観点から以下の研究を実施した。 1.疎水性相互作用を利用した変性前後のリゾチームの吸着特性 変性前後のタンパク質は疎水性クロマトグラフ用担体への吸着特性が異なった。半回分式でリフォルディングしたタンパク質溶液をカラムに充填した担体に吸着させ、濃度勾配溶出を行うことで狭い画分に回収することができた。 2.変性タンパク質の再活性化 変性させたモデル酵素溶液を、再活性化溶液ヘ一定速度で注入する半回分式リフォルディングを行ったところ、酵素濃度の高い領域で回分式リフォルディングより高い再活性化率が得られた。 3.セラミック担体へのタンパク質のダイナミック膜の形成特性 多孔質セラミック支持体上に0.9以上の自己阻止率を有する卵白アルブミンのダイナミック膜を形成することができた。無機塩やゲル化阻止剤を添加すると、ダイナミック膜の形成が阻止されるだけでなく、既に形成された膜も消失した。 4.タンパク質構成要素であるアミノ酸の水溶液中での挙動 L-アスパラギン酸の晶析において、共存アミノ酸は製品結晶に多く含まれ、製品結晶の晶癖も悪化させた。 5.二段階膜分離を付属する発酵槽によるバイオポリマーの連続生産 Bacillus subtilisの生産するPoly-γ-Glutamic Acidを、精密ろ過で微生物と分離し、限外ろ過で分離、回収した。長時間の運転で生じる精密ろ過性能の低下は透過液で逆洗することで改善できた。
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