金属/絶縁体薄膜界面を含む種々の薄膜における界面反応を研究するために、いくつかの実験および検討を行った。当初、第一の目標としていたのはAl/SiO_2界面であったが、それぞれの薄膜自身が秩序構造を保ちながら薄膜成長をしえないことが、検討の結果、明らかになったために、いくつかの薄膜界面において、その界面構造や界面反応過程を調べるための実験的な基礎検討を行った。 本年度購入したヌ-センセルを新たに、既存の光電子回析-薄膜成長解析装置に組込み、多元系の薄膜蒸着を可能とした。これにより、複雑な化合物薄膜の蒸着も基本的には可能となった。ただし、本年度はむしろ、下地基盤原子を蒸着することにより、よく制御された基盤表面、すなわち薄膜成長時の界面を作り出し、いくつかの質のよい薄膜を成長させることが可能となった。その結果、SrF_2/Ge(111)やCaF_2/Ge(111)などの薄膜を制御良く成長させることができた。SrF_2/Ge(111)については、その薄膜や界面の構造や状態、薄膜成長のプロセスについてX線光電子回析法により明らかにした。また、CaF_2/Ge(111)系ではこの系自身の構造の測定も行ったが、最表面に電子線照射により、金属Ca層を生成することができた。この金属/絶縁体界面の構造や状態を調べるために、シンクロトロン放射光を用いた光電子回析の角度依存性やエネルギー依存性を測定し、現在解析を行っている。さらに、Cu/Ge(111)界面構造やその酸化反応プロセスを調べるために、この系について基礎的な検討を行った。 また、界面反応を精度良くとらえるために、2次元同時検出システムによる光電子回析測定の迅速化についての実験も行った。
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