本グループでは、電解質溶液またはゲル状試料中におけるpH等の化学的情報の2次元的な空間分布を画像化することができる、化学イメージングセンサの開発を行なってきた。この方法では、センサ表面の電荷によって半導体層中に空乏層幅の分布が生じることを利用して、その静電容量を場所ごとに読み出して行くことになる。具体的にはセンサ裏面から変調レーザビームを照射し、静電容量に応じて外部回路に流れる交流光電流を計測する。現在までに、空間分解能10ミクロン、pH分解能0.01、測定速度毎秒100ピクセルを達成している。このうち、空間分解能およびpH分解能については多くのアプリケーションにおいて十分な値であるが、測定速度については1画面の測定に分オーダーの時間を要することから、変化の速い現象の測定に用いることが出来ない。 本研究では、化学イメージングセンサの実時間化に向けて装置および測定方式の改良を行なった。従来の変調レーザビームに替えて単発の光パルスに対する過渡応答電流波形を計測し、その極大値と極小値の差を以ってセンサの信号値とする方式について実験を行ない、従来方式と同じノイズレベルを維持したままで10倍以上の高速化ができることを示した。また、この方式は従来の方法に比べて、低周波ノイズの影響を受けにくいという利点がある。 さらに、装置上の改良としては、走査のために試料側を移動させる機構から光学系を移動させる機構に改めて高速の走査を可能にしたこと、レーザ集光用の下部光学系の他に試料の実体観察・位置合わせのための上部光学系を設けたことなどが挙げられる。
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