濃厚試料測定用化学センサの開発

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09650892
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 今任 稔彦 九州大学, 工学部, 教授 (50117066)
• キーワード: 濃厚試料 / 酸、塩基 / 金属イオン / 電位差検出 / 化学センサ

研究概要

本研究は、濃厚な酸・塩基、金属イオン及び酸化還元性成分を直接測定できる化学センサの開発を目的として、pH、金属イオン及び電位に関する緩衝液を内部液とする電位差検出法並びに光学的検出法に基づくセンサを試作し、その性能を検討している。本年度の成果は以下の通りである。
(1)センサの内部液に用いる種々の高分子電解質を種々検討した。内部液の高分子電解質としては、pHセンサ用にはポリアクリル酸、金属イオンセンサ用にはポリエチレンイミン、また酸化還元性成分用センサとしては鉄(III)-鉄(II)形のポリスチレンスルホン酸が適していることが分かった。
(2)センサの隔膜材料を種々検討したところ、セロファン製のダアリシス膜(ビスキング膜)が適当であることが分かった。ダイアリシス膜を通して、銅イオンなどの金属イオンや過酸化水素やアスコルビン酸などの酸化還元性成分の拡散透析を行い、それら成分の膜内の拡散係数を測定し、センサの応答性を見積もることができた。
(3)鉄(III)-鉄(II)形のポリスチレンスルホン酸水溶液を内部液とし、ダイアリシス膜を用いた酸化還元性成分応答センサを試作した。このセンサのアスコルビン酸に対する応答を調べたところ、30秒程度の誘導期間の後、内蔵の酸化還元電極の電位は時間に比例して増加し、この電位変化速度が試料の濃度に比例することが分かった。
(4)試作したアスコルビン酸センサは0.1M-1Mの濃度の試料についての測定が可能であり、センサの感度が、隔膜の厚さ、内部液の濃度に依存することを明らかにし、隔膜内の試料の拡散係数から応答速度をシミュレートできることを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Sadayuki Koizumi: "Effect of concentrations of triphenyltin chloride and anion exchanger on anion selectivity of plasticized PVC membrane electrode" Fresenius'Journal of Analytical Chemistry. 357. 37-43 (1997)
• [文献書誌] Takashi Masadome: "Flow injection determination of anionic polyelectrolytes using an anionic surfactant-selective plasticized poly(vinyl chloride) membrane electrode detector" Fresenius'Journal of Analytical Chemistry. 357. 901-903 (1997)
• [文献書誌] Takashi Masadome: "Potentiometric titration of anionic polyelectrolytes using a cationic surfactant solution as a titrant and a titrant-sensitive plasticized poly(vinyl chloride) membrane electrode" Fresenius'Journal of Analytical Chemistry. 358. 538-540 (1997)
• [文献書誌] Takashi Masadome: "Sensitive end-point detection for potentiometric titration of cationic polyelectrolytes using maker cation-selective electrode" Analytical Communications. 34. 257-259 (1997)
• [文献書誌] Sadayuki Koizumi: "Bi-ionic mambrane potential across a liquid anion-exchange membrane containinig triphenyltin chloride" Journal of Membrane Science. 133. 149-158 (1997)
• [文献書誌] Eva M.Kocsis: "Separation Bihavior of Anions on ODS Modified with Phthalocyanine Cobalt(III) complex" Analytical Sciences supplement. 13. 195-198 (1997)