研究概要 |
本研究では,ピレニルアミド基を蛍光団とするDB16C5型蛍光プローブを新規合成し,ジオキサン水溶液中でのアルカリ金属イオンに対するの応答挙動を明らかにした。この化合物は,30mMのTMAOHを含むジオキサン水溶液中でNa^+塩の添加により,短波長側のモノマー発光(387nm,408nm)が減少し,等発光点を伴って長波長側(473nm)に新しいCT性の発光が現れるRatiometricな応答が得られることを見出した。それぞれの発光波長の励起スペクトルから,長波長側のCT発光は基底状態からの電子スペクトル変化に基づくことを確認した。この発光は,Na^+塩が存在するときのみ起こり,またTMAOH濃度の増加と共に増加する。従ってNa^+錯体生成に基づくアミドプロトンの酸解離が原因と考えられる。CT発光とモノマー発光強度比(F_<473>/F_<387>)とアルカリ金属塩濃度の関係を調べた結果,Na^+塩に対し非常に優れた蛍光分析が可能であることが明らかとなった。アミノB15C5骨格にピレン酪酸をアミド結合を介して導入した蛍光プローブは水溶液中では殆ど蛍光を発しないが,γ-CDに包接されるとピレンのモノマーに由来する蛍光を示す。蛍光プローブ/γ-CD複合体の蛍光スペクトルは,Na^+塩添加では殆ど変化しないのに対し,K^+塩の添加により470nm付近に新たな発光が現れた。K^+塩濃度の増加とともに,等発光点をともなってモノマー発光強度が減少し,長波長側の発光強度が選択的に増加した。B15C5型蛍光プローブは,有機溶媒中ではB15C5の1:1錯形成に基づくNa^+選択性しか示さない。従って本システムはバルク溶媒系とは全く異なる機能を有しており,水中でのK^+の高感度認識に利用可能であることが明らかとなった。
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