平成10年度の研究実施計画は次のような検討項目から成っている。 1.固相反応場としての高活性塩基触媒を利用するCL計測、 2.機能性界面活性剤分子集合体を用いる固相反応場の構築、 3.固相反応場のキャラクタリゼーション; 各検討項目について、以下に研究実績を記す。 1. (1)塩基性金属酸化物(BaO)を過酸化水素で処理することにより得られる過酸化物(BaO_2)をCL反応場として利用することによりカルボキシル基を有する有機化合物(3種のコール酸)のポストカラムCL検出に成功した。また、BaOをペルオキソ-硫酸塩溶液及び亜硝酸イオンを含む過酸化水素溶液で処理するとBaO上に酸化性活性種が安定に生成することを見い出し、新たな固相CL反応場として期待できることを明らかにした。(2)強塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトA-26及び-27)にルミノールを固定化した酸素ガスセンサー素子を構築し、その特性を詳細に調べた。実試料への応用として窒素ガス及び都市ガス中のppmレベルの酸素の定量を行った。 2. 固相マトリックスとしてポリスチレン及びパラフィン(C_<28>)を利用し、その表面に界面活性剤(2C_<18>)二分子膜とオクタデシル基の付いたMn(III)-ポルフィリン触媒を固定化することによりアドレナリンセンサー素子を構築し、素子のアルカリ溶液に対する耐久性について詳細に検討した。耐久性は測定方法、即ち絶えずアルカリ溶液と接触しているに連続測定法と接触時間の少ない間欠測定法ではあまり変わらないという予想に反した結果が得られた。今後更に、耐久性について検討を加えることとした。 3. BaO上に安定に存在すること判明したが新たな強酸化性活性種がESR及び反射スペクトルから硫酸イオンラジカルであることが、またESR及び赤外スペクトルからペルオキシニトリトであることが推定された。これらの活性種はそれぞれインドール及び核酸塩基類に対して有効なCL反応場となることが判明した。
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