研究概要 |
1. 鉄鋼中ヒ素の定量方法の開発 鉄鋼試料を塩酸ー硝酸で分解したままの溶液中で全操作が可能なヒ素定量方法が開発できた。作用電極には回転金膜を用い,ヒ素(V)の還元にはヨウ化カリウムが最適であった。前電解は-0.5V vs.SCEで180秒間,溶出は示差パルスモードにより電位を40mV/sの速度で0.2V vs.SCEまで走査し,得られた溶出曲線のピーク高さからヒ素を定量した。 1000μg/mlの鉄を共存させて得られたヒ素の検量線は,10〜40ng/mlで原点を通る直線となり,25ng/mlでの相対標準偏差(n=5)は3.4%であった。本法は鉄鋼中10μg/g以上のヒ素の定量に適用可能であり,鉄鋼、中50.4〜448.8μg/gのヒ素を高い精度と正確さで定量できた。検出限界(3σ,n=10)は180秒間の前電解で1.04ngAs/mlであり,分析所要時間は40分以内と大幅に短縮できた。 開発したこの方法は,有害試薬を用いた煩雑で熟練と時間を要する前処理操作が不可欠な現行JIS法とは全く原理が異なり,迅速簡便なJIS代替分析方法として有用である。また,市中スクラップ利用製鉄における鉄鋼中ヒ素の定量方法としても有効である。 2. 鉄鋼中クロム,アンチモンの定量方法の開発 クロムは1,5-ジフェニルカルバゾン錯体を利用する吸着ストリッピングボルタンメドリー,アンチモンはヒ素とほぼ同様の方法により簡便に定量できることを明らかにし,投稿準備中である。
|