研究概要 |
1.鉄鋼中アンチモン,スズ ,モリブデン,テルル及びクロムの定量方法の開発 鉄鋼試料を簡易に高感度分析できる酸分解直接ストリッピングボルタンメトリーを開発した。アンチモンとスズの作用電極には回転金膜を用い,アンチモン(V)はヨウ化カリウムで還元後,スズ(IV)は臭化ナトリウム共存下でアノーディックストリッピング法により定量した。モリブデン(VI)は酸化モリブデン(IV)としてグラッシーカーボン電極上に電着後,支持電解質溶液変換法を適用して陽極溶出させた。臭化物を含む酸性試料溶液中,テルル(IV)は銀電極上にテルル化銀として無電解濃縮後,カソーディックストリッピング法により定量できた。ペルオキソニ硫酸で6価へ酸化したクロムは,ジフェニルカルバジドとの錯体を開回路でグラファイト電極上に吸着濃縮するカソーディックストリッピング法により簡便に定量できた。鉄(IIまたはIII)共存下,鉄鋼等中ppmレベルのこれら元素が数%の相対標準偏差で,正確かつ迅速に定量できた。開発したこれらの方法は,有害試薬を用いた煩雑で熟練と時間を要する前処理操作が不可欠な現行JIS法とは全く原理が異なり,迅速簡便なJIS代替分析技術として有用である。また,市中スクラップ利用製鉄における鉄鋼分析法として有効である。 2.鉄鋼中多元素同時定量法の開発 酸分解した鉄鋼試料溶液中の鉄(III)をL(+)-アスコルビン酸で2価へ還元後,亜鉛,カドミウム及び鉛はアノーディックストリッピング法により,銅,鉛及びカドミウムは定電流ストリッピングアナリシスにより高い感度と精度で簡便に同時定量できることを明らかにした。
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