研究概要 |
1. 本研究は、金イオンセンサ感応膜に用いている可塑剤や高分子の末端にチオール基を導入し、これらを電極表面に金ーイオウ結合を利用して修飾し、界面活性剤イオンならびに高分子イオンセンサを電気化学的水晶振動子マイクロバランス(QCM)法によりセンシングする系を開発することを目的とした。 2. 3. まず、SH(CH_2)_<10>COOH,SH(CH_2)_<11>NH_2・HCl,SH(CH_2)_3NH_2・HClならびにBr(CH_2)_6NH_2・HBrの4種のイオウ化合物の合成を試みた。SH(CH_2)_<10>COOHは純度のよいものを合成できたが、SH(CH_2)_<11>NH_2・HClは、3段階目の反応が難しいので合成できなかった。SH(CH_2)_3NH_2・HClは一応合成できたが、純度は85%程度と良好ではなかった。Br(CH_2)_6NH_2・HBrは一応合成できたが、適当な再結晶溶媒を見つけることができなかった。そこで、SH(CH_2)_<10>COOHとSH(CH_2)_3NH_2・HClをイオウ化合物として用い、QCMの金電極表面をこれら化合物により修飾して、QCMセンサーを作製した。まず、SH(CH_2)_<10>COOHで修飾したQCMセンサーの陽イオン性高分子電解質に対する応答を検討した。10^<-5>〜10^<-2>Mの濃度範囲で、QCMセンサーの周波数は試料濃度に依存しなかった。さらにセンサの周波数が不安定であり、再現性も良好ではなかった。 また、SH(CH_2)_3NH_2・HClで修飾したQCMセンサーの陰イオン性高分子電解質に対する応答を検討した。SH(CH_2)_<10>COOHで修飾したQCMセンサーの陽イオン性高分子電解質に対する応答と同様に、SH(CH_2)_3NH_2・HClで修飾したQCMセンサーの周波数は試料濃度に依存しなかった。さらにセンサの周波数が不安定であり、再現性も良好ではなかった。これは検討したQCMセンサーの周波数が試料濃度に依存しないのは、イオウ化合物にイオン性高分子電解質が吸着していないためだと考えられる。今後、今回はうまく合成できなかったイオウ化合物の合成を再検討し、サイクリックボルタンメトリーを用いてイオウ化合物にイオン性高分子電解質が吸着するかを確かめ、さらにQCM以外の測定法たとえば表面プラズモン共鳴法を用いることを検討することにより、目的のQCMセンサを開発することを考えている。
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