1.本研究は、金イオンセンサ感応膜に用いている可塑剤や高分子の端末にチオール基を導入し、これらの電極表面に金一イオウ結合を利用して修飾し、界面活性剤イオンならびに高分子イオンセンサを電気化学的水晶振動子マイクロバランス(QCM)法によりセンシングする系を開発することを目的とした。 2.3.SH(CH_2)_<10>COOHとSH(CH_2)_3NH_2・HClをイオウ化合物として用い、QCMの金電極表面をこれら化合物により修飾して、QCMセンサーを作製した。まず、SH(CH_2)_<10>COOHで修飾したQCMセンサーの陽イオン性高分子電解質に対する応答を検討した。10^<-5>〜10^<-2>Mの濃度範囲で、QCMセンサーの周波数は試料濃度に依存しなかった。さらにセンサの周波数が不安定であり、再現性も良好でなかった。また、SH(CH_2)_3NH_2・HClで修飾したQCMセンサーの陰イオン性高分子電解質に対する応答を検討した。SH(CH_2)_<10>COOHで修飾したQCMセンサーの陽イオン性高分子電解質に対する応答と同様に、SH(CH_2)_3NH_2・HClで修飾したQCMセンサーの周波数は試料濃度に依存しなかった。さらにセンサの周波数が不安定であり、再現性も良好ではなかった。検討したQCMセンサーの周波数が試料濃度に依存しないのは、イオウ化合物にイオン性高分子電解質が吸着していないためだと考えられる。さらにQCMの金電極表面をオルトニトロフェニルオクチルエーテルで可塑化したポリ塩化ビニル膜により修飾して、QCMセンサーを作製し、その高分子電解質に対する応答を検討した。その結果、作製したセンサは高分子電解質に対して応答を示さなかった。今後の課題としては、まず、今回はうまく合成できなかったイオウ化合物の合成を再検討し、サイクリックボルタンメトリーを用いてイオウ化合物にイオン性高分子電解質が吸着するかを確かめる。次にQCM以外の測定法たとえば表面プラズモン共鳴法を用いることを検討することにより、界面活性剤並びに高分子電解質に感応するセンサを開発することを考えている。
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