研究概要 |
幾つかのイオウを含む単環含窒素芳香族架橋配位子をもつロジウムならびにルテニウム複核錯体を合成し、これらの結晶構造を調べて、配位子のイオウ原子間の分子間相互作用による結晶内の分子配向について検討し,以下のような成果を得た。 (1)3-Isothiazolone(Hitl)とtetrakis(acetato)dirhodiumの反応により、イオウを含む単環含窒素芳香族架橋配位子をもつロジウム複核錯体、[Rh_2(itl)_4(Hitl)_2]、を低収率ではあったが合成単離した。その結果構造において、隣接錯体のヘテロ芳香族配位子が互いにπスタックした1次元鎖構造が形成されていて、このπスタックは隣接分子のイオウ原子間の相互作用によりもたらされていると考察された。 (2)Tetrakis(acetato)chlorodirutheniumと4-methyl-2-(methylamino)thiazole(Hmmat)あるいは4,5-dimethyl-2-(methylamino)thiazole(Hdmat)との反応により[Ru_2(mmat)_4Cl]ならびに[Ru_2(dmat)_4Cl]を合成単離した。これらの錯体の結晶構造は,錯体の作る層と結晶溶媒からなる層とが交互に重なり合った構造となっていた。[Ru_2(mmat)_4Cl]の結晶においては隣接分子のイオウ原子間距離が3.45Åと短く、結晶の層構造がイオウ原子間相互作用によりもたらされていた。一方、[Ru_2(dmat)_4Cl]の結晶構造には芳香環配位子環のπスタック構造は見られなかった。 上記の結果は、i)ヘテロ芳香族配位子をもつ複核錯体の隣接分子の配位子間πスタックがイオウ原子間の相互作用によりもたらされる、ii)イオウ原子間の相互作用は支配的に強いもではない、ということを示している。
|