研究概要 |
幾つかのロジウム複核錯体ならびに塩素で架橋したロジウム四核錯体を合成し、これらの結晶構造を調べて、金属電子と配位子電子間の分子内・分子間相互作用と性質について検討し、以下のような成果を得た。 1 種々の配位子をもつ一連のロジウム複核錯体とその1電子酸化錯体の単結晶X線構造解析結果とB3LYPポテンシャルを用いた密度汎関数法による電子状態計算結果を比較し,以下のことを明らかにした:(1)軸配位ホスフィンをもつロジウム複核錯体はイオン化に伴いリン・金属原子間距離は短くなり,ホスフィン配位子三角錐構造が浅くなる。これは金属原子とホスフィン配位子間の強い電子的相互作用に基づくものである。(2)アミダート架橋配位子をもつロジウム複核錯体は一電子酸化により金属原子・架橋配位子間結合距離が短くなる。これは金属原子間δ電子の配位子π系への非局在化の証拠である。(3)ロジウム複核錯体における金属原子間π電子は金属原子上に局在していることが示された。これら(1)-(3)の結果は,強いσ供与性の軸位架橋配位子を介した金属原子・軸配位子σ電子相互作用系の構築により電気伝導等の機能発現の可能性を示す。また,強いπ供与性の架橋配位子を介した金属原子・軸配位子π電子相互作用系の構築により電導性・磁性等の物性が期待される。芳香族架橋ロジウム複核会体カチオンラジカル塩の電導度は室温において10^<-7>Scm^<-1>程度であった。 2 有機塩化ケイ素化合物とロジウム複核錯体との反応により全く新しい骨格をもつ塩素架橋ロジウム四核錯本を合成し,その構造や電子スペクトル等の基礎的分子物性を明らかにし,またこの新しい錯体が水溶液反応触媒機能を示すことを新たに見出した。 これらの結果は,金属原子と配位子にまたがる相互作用電子系の応用による機能性素材開発の可能性を示す。
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