研究概要 |
固体中を高速でイオンが拡散するイオン導電体の物質設計には、(i)異なる価数のイオンを固溶させ構造内に格子欠陥および格子間イオンを導入、(ii)イオン半径の異なる原子を固溶させイオン拡散経路のボトルネックを拡張、(iii)分極率の大きな原子を固溶させイオン移動を増加させる手法などが存在する。LISICON[Li_<14>Zn(GeO_4)_4]を基本に、酸素よりもイオン半径の大きい窒素を固溶させたLiPO_3-Li_3N系と、イオン半径、分極率が大きい硫化物Li_2S-SiS_2-P_2S_5系,Li_2S-GeS_2-Ga_2S_3系で物質の探索を行ない、チオリシコンなる新規な物質群を見いだした。 1. LiPO_3-Li_3N系:高圧合成を行い、Li_<1+3x>PO_3N_X(0.67≦x≦1.5)でγ-Li_3PO_4型の化合物を、x=0.25で新規相を見いだした。x=0.43が45℃で4.60×10^<-6>S/cm^<-1>の導電率を示した。 2 チオリシコンLi_2S-GeS_2-ZnS系:六種類の新規化合物Li_2GeS_3、Li_4GeS_4、Li_2ZnGe-S_4、Li_<4-2x>Zn_XGeS_4、Li_5GaS_4、Li_<4+δ+X>Ge_<1-δ'-X>Ga_XS_4を合成した。Li_4GeS_4はγ-Li_3PO_4型構造を持ち酸化物LISICONと同型の物質で、一連の物質群の母構造となる。Li_<4+x+δ>(Ge_<1-X>Ga_X)_<1-δ'>S_4で表すことができる固溶体が最も高いイオン導電率6.49X10^<-5>S/cmを示した。 3. チオリシコンLi_2S-SiS_2-P_2S_5系:Li_<4-x>Si_<1-x>P_xS_4固溶体を合成した。X=0.6で室温で6.4×10^<-4>S/cmの導電率が観測された。結晶性のリチウムイオン導電体の中ではLi_3N(1.0×10^<-3>S/cm),La_<0.5>Li_<0.5>TiO_3(1.0×10^<-3>S/cm)に匹敵する高い導電率であった。
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