研究概要 |
ニッケル-水素化物電池は高エネルギー密度の二次電池であり,負極材料について活発な研究開発が進められている.特に負極材料として使用される水素吸蔵合金に関しては多種類の合金設計が可能であり,現在実用されている希土類系水素吸蔵合金よりも高容量化が期待される次世代材料としてラーベス相水素吸蔵合金やMgNi合金が注目されている.本研究ではラーベス相合金およびMgNi合金の充放電特性について検討を行い下記のような成果を得た. 1)ラーベス相合金としてはZr_<0.9>Ti_<0.1>(Ni_<1.1>Co_<0.1>Mn_<0.5>V_<0.2>Cr_<0.1>)_xなる組成の合金(x=0.9,1.0,1.1)について検討し,X=1.0の組成で最も大きな放電容量(約400mAh/g)が得られることを見い出した.しかし,この放電容量に達するまでには20〜30回以上の充放電サイクルが必要であり,活性化が遅いので,この点を改善するために合金のメカニカルグラインディングや濃アルカリ液での煮沸処理を行った結果,2サイクル程度で活性化が完了し,高率放電特性も著しく向上することを見い出した.また,合金組成による電気化学的特性の相違は結晶学的パラメータおよび圧-組成等温線から求めた熱力学的なデータと強い相関性を持つことを明らかにした. 2)MgNi合金の作製条件と充放電特性については十分な検討がなされていないので,まず,メカニカルグラインディングの強度と処理時間について検討した結果,処理時間が長くなるほど均質な非晶質MgNi合金が生成し,放電容量も増加するのに対して,強度には最適値があり,3.2G〜4.8Gで合金化を行った場合に500mAh/g以上の大きな放電容量が得られた.また,強度および処理時間を一定にし,酸化マグネシウムあるいはグラファイト粉末を添加した条件で合金化を行った場合,前者の添加剤は合金化を促進するのに対して,後者は合金化を妨害するため,放電容量が著しく低下することを見い出した.
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