研究概要 |
本研究においては次の3つのプロジェクトについて研究を行った。 (1) シングレットカルベン類の不飽和炭化水素への反応 カルベン類似化合物としては炭素、シリコン、ゲルマニュウム、スズ、の水素およびフッ素化合物を取り扱った。これらの付加反応が2段階反応であることを示した。また、反応機構を我々が提案したCiLC-IRC(CASSCF-LMO-CI計算を反応座標に添って行なう)解析を行い、反応のエネルギー障壁の大きさはシングレットカルベンがトリプレットカルベンに励起するエネルギーに起因することを見いだした。 (2) プタジェン、およびジシリルブタジェンの閉環反応についてその反応機構の本質を調べた。プタジェンの共旋および逆旋反応のエネルギー障壁の違いは約20Kcal/Molであるが、そのうち軌道相互作用から生じるエネルギーは約半分の10kcal/Molであることを明らかにした。また、1,4-ジシリルプタジェンの共旋、および逆旋反応のエネルギー障壁の差は約4Kcol/Molであった。これらの反応の違いをCiLC-IRC解析を行うことにより調べた。その結果エネルギー障壁の違いはC-C結合とSi-C結合におけるバイラジカル特性の違いから来ていることを明らかにした。 (3) 均一型Ziegler-Natta触媒反応の補助触媒の働き。チタン金属に配位した塩素の役割について調べた。その結果メチルが配位している場合とヒドロニュウムイオンが配位している場合で反応性が大きく異なることを見いだした。また、補助触媒としてはアルミニュウムがその塩素に与える影響について調べた。その結果反応のエネルギー障壁の減少に大きく寄与していることが明らかになった。
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