研究概要 |
ポリシラザンに金属モリブデン粉末を5wt%〜30wt%の割合でアルゴン中で混合・粉砕し、CIP成形した後1273K,10hで焼成することにより、非晶質Mo-Si-C-Nセラミックスが合成された。これらのセラミックスを1773Kアルゴン中で二次焼成し、種々の組成のMoSi_2-SiCコンポジットが合成された。シェラーの方法により求められた平均結晶子サイズは、MoSi_2およびSiC共30〜70nm程度の極微細な結晶からなっていることがわかった。Mo添加量が5,15wt%の試料では半導体的な性質を示し、20,30wt%添加の試料では、300Kから600Kの温度域では金属的、600Kから1000Kの温度域では半導体的な性質を示した。同コンポジットのゼーベック係数の測定結果から、全てのコンポジットの半導体極性はn型であり、MoSi_2相の生成量比が大きい試料ほどゼーベック係数の絶対値が大きくなった。半導体のゼーベック係数の絶対値の大小は一般にキャリア濃度に依存しキャリア濃度が増加するに従い絶対値が低下するが、元素分析の結果からMoSi_2相の生成量比が大きいコンポジットほどキャリアとなるN量が低下し、ゼーベック係数の絶対値が増加したと考えられる。 本研究で合成されたMoSi_2-SiCセラミックコンポジットは、電気伝導度の温度係数がMoSi_2およびSiC単体に比べて非常に小さい値を示し、前述したように非常に小さな結晶子サイズであること、同様の方法で合成されたSiCに比べて優れた耐酸化性を示したことから、特に超高温で使用可能な新規発熱体として有望である。また、パワーファクターもMoSi_2およびSiC単体よりも大きな値を示したことから、熱電変換材料の一つの候補材料として今後さらに検討していく必要性が示唆された。
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