水酸化亜鉛に代表されるアモルファス状の金属水酸化物と有機オキシ塩化物または有機カルボン酸と反応させ、有機誘導体型の組織体形成反応について様々な検討を行った。反応は室温から80°Cくらいまでの比較的温和な条件で進行し、得られた生成物のIR分析で反応によるCOO-金属結合の生成が確認された。また元素分析や熱分析で反応量の定量化を行い、RCOO-金属-OCORの有機塩とは異なる新規な組織体の最適合成条件を明らかにした。この際、XRDにて組織体の結晶構造について情報を得ると共にSEMやTEMで複合体の構造について詳細な検討を行い、得られた組織体が有機化合物の種類・量および溶剤の種類によって板状あるいは繊維状形態を示す層状物質であることが分かった。層間距離は有機化合物の大きさや反応量に依存し、モノカルボン酸と反応させて得られた組織体の層間距離は43Å程度まで大きくなった。層間距離と有機化合物の大きさから、有機化合物は層内部で二層で存在していることが分かり、またジカルボン酸と反応させて得られた組織体の層間距離からは、架橋構造体が生成していることが分かった。特に繊維状化合物は、カルボキシル基を有する炭素の立体的かさ高さが大きいときに特異的に生成することが分かった。TEMからは湾曲した状態の無機層も観察され、無機表面と反応した有機化合物同士の立体的反発によって繊維状構造が形成されることが示唆された。しかし組織体の形態は有機化合物の反応量に依存し、反応量が小さい場合には、ヒドロキシダブルソルト型の層状構造体を形成し、板状であることが分った。
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