本研究では、ゼオライトY、アルミノリン酸塩モレキュラーシーブ-5(AlPO_4-5)等の格子空間での機能性クラスターの合成および評価を行った。 (1) 重合開始剤であるCu(II)イオン量が異なるゼオライトY(NaY、USY)の格子空間ヘピロールを包蔵し、評価した。Cu(II)イオンが高濃度の場合にポリマーとして包蔵され、その電子構造はNaYではバイポーラロン状態であるのに対し、USYではバイポーラロン状態とポーラロン状態との混在であることを見いだした。 (2) Cu(II)イオン含有六方晶フォージャサイトおよびFe(III)イオン含有ベータの格子空間へチオフェンとピロールをそれぞれ包蔵し、評価した。両空間内にバイポーラロン状態の電子構造を有するポリチオフェンおよびポリピロールクラスターが生成された。 (3) AlPO_4-5の一次元チャンネル内でo-、m-、p-ニトロフェノールおよびニトロアニリンクラスターを合成し、包蔵により発現する光学特性を評価した。p-ニトロアニリン包蔵と同様に、o-、m-、p-ニトロフェノールおよびo-、m-ニトロアニリン包蔵により非線形光学特性が発現(第二高調波が発生)した。第二高調波強度の序列はニトロフェノール包蔵ではm-<p-<o-位、ニトロアニリン包蔵ではm-<o-≪p-位となり、o-、p-位のクラスターによる第二高調波は包蔵量依存性を示すのに対し、m-位のクラスターによるそれは殆ど依存しないことを見いだした。 (4) カンクリナイトの格子空間で硫化カドミウム、硫化亜鉛、硫化鉛半導体クラスターの合成を行い、評価した。その結果、紫外可視領域での硫化カドミウムクラスターの吸収端はバルク結晶と比較してブルーシフトした。
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