現在のシリコン系太陽電池に代わり、高い光電変換効率を示す薄膜型太陽電池の開発が急務となっており、液相から直接結晶質薄膜を合成できる化学浴法による多積層型太陽電池の作製及びその電気的特性が注目されている。そこで、本研究では、化学浴法により結晶質硫化カドミウム、セレン化カドミウム及び酸化亜鉛の薄膜あるいは微粒子を合成し、多積層型太陽電池材料としての電気的性質について検討を行った。太陽電池材料の1つである硫化カドミウム薄膜を合成するためには、前駆体溶液中に錯化剤としてトリエタールアミン及びアンモニアを添加する必要があった。一方、酸化亜鉛微粒子を合成するためには、前駆体溶液をアンモニアでアルカリ性にする必要があり、セレン化カドミウム微粒子の場合には、錯化剤としてジカルボン酸及びセレンイオンの酸化防止剤として亜硫酸ナトリウムを添加する必要があった。これら材料の電気的特性は、硫化カドミウムでは光の照射波長のより大きく異なったが、酸化亜鉛及びセレン化カドミウムの場合には光波長に対する電気的特性の変化は認められなかった。模擬的に酸化亜鉛と硫化カドミウムの界面状態及びその導電率を調べたところ、酸化亜鉛と硫化カドミウム界面には硫酸カドミウムが生成し、硫酸カドミウムの生成量の増加に伴い導電率は低下することが明らかとなった。
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