1.層状構造を持つチタン酸塩は、イオン交換体やインターカレーションのホストとして多くの研究がなされてきた。しかしながら、イオン伝導体としてはあまり調べられていない。本研究では層状構造を持つチタン酸塩Cs_×Ti_<2-x>/_4O_4を取り上げ、新しいチタン酸塩の合成とその評価を行うことを目的とする。 2.層状チタン酸塩Cs_×Ti_<2-x>/_4O_4は二酸化チタン(アナターゼ型)と炭酸セシウムを混合し、700℃で加熱して合成した。イオン交換は各金属の塩化物あるいは硝酸塩水溶液中に試料を分散することにより行った。電気伝導度は交流インピーダンス法により測定した。 3.層状チタン酸塩Cs_<2-x>/_4O_4は0.68【less than or equal】x【less than or equal】0.88の組成域で得られた。層間に存在するセシウム量が最も少ないx=0.68の試料Cs_<0.68>Ti_<1.83>O_4について調べた。この試料の伝導度は室温で10^<-12>Scm^<-1>程度と見積もられ、イオン伝導性は示さなかった。試料層間のCs^+はH^+、Li^+およびNa^+とイオン交換可能であり、反応後も層状構造を保持し、層間水を含むようになった。+30〜-30℃の温度範囲で行った伝導度測定より、試料はイオン伝導性を持つことがわかった。この伝導の活性化エネルギーは10〜18kcal/molであり、バ-ミキュライトやモンモリロナイトなどの層状粘土鉱物のものよりも若干大きいことがわかった。本研究で得られた試料は固体電解質としての応用が可能であると考えられる。 試料層間のCs^+はさらに遷移金属イオンであるNi^<2+>ともイオン交換可能であることがわかった。今後は種々の遷移金属イオンについて、イオン交換反応と生成物の性質について調べる予定である。
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