研究概要 |
本年度の研究実施計画に従い,まずパラジウム触媒を用いた炭酸プロパルギル類とアルキンのカップリング反応の反応条件検討を行った。その結果、5%のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムの存在下,炭酸プロパルギルに対して3倍量のアルキンを共存させ,ジメトキシエタン中加熱還流することにより,炭酸プロパルギルに対して2分子のアルキンが付加した共役エンジイン化合物が収率良く得られることがわかった。また,この反応がアレンインの生成とそれに続くアルキンの付加の2段階で進行していることを明かにした。このことを利用して,2種の異なるアルキンを順次加えることにより,それぞれが位置選択的に付加した非対称型共役エンジイン化合物を1段階で得ることに成功した。このように,パラジウム触媒を用いた,3成分カップリングによる,効率的な共役エンジイン骨格構築反応を開発することができた。 一方、上記反応の検討中に得られたアレニルシクロプロパン化合物が、環拡大転位を起こすことを見出し、この反応についても検討した。その結果、ロジウム中性錯体触媒およびカチオン性錯体触媒を用いた場合に、炭素-炭素結合の開裂を伴って環拡大転位が進行し、共役ジエンであるメチレンシクロペンテンが収率良く得られることがわかった。また、用いる基質および触媒の種類により、異なる炭素-炭素結合切断の位置選択性が発現することを見出した。このように、ロジウム触媒を用いた炭素骨格再構築を経る不飽和結合系の新規構築反応を見出すことができた。
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