研究概要 |
天然には有用な生理活性を有するアルカロイド、ペブチドやβ-ラクタムをはじめとする含窒素有機化合物が数多く存在し、その多くは光学活性である。これらの化合物の合成には光学活性アミノ化合物は有用な合成中間体である。また最近光学活性1,2-ジアミンあるいは1,2-および1,3-アミノアルコールやジオール類が極めて有用なキラル配位子、あるいは分子内に組みこまれた不斉源として多くの不斉合成反応に用いられその簡便かつ高光学純度での合成が強く望まれている。昨年までにL-トレオニンから誘導したβ-アミノアルコールから誘導されるオキサザボロリジンは各種イミノケトンおよびジイミンのジアステレオおよびエナンチオ選択的還元反応に極めて有用であることを報告した。本年度は同様にL-トレオニンから誘導したオキサザボロリジンを用い、反応条件を適切に選択することにより、1.3-ジケトン化合物がジアステレオおよびエナンチオ選択的に還元され、対応するキラルジオールが高い収率および光学純度で得られることを見い出した。すなわち2,2-ジ置換-1,3-シクロヘキサンジオンおよび1,3-シクロペンタンジオン等環状ジケトンの還元反応ではchiral化合物のみを高い光学純度で得ることができた。さらに各種メソイミドの還元反応では立体選択的に非対称化された還元生成物であるラクタム誘導体が79〜98%eeの光学純度で得られることを見いだした。特にイミダゾリドン環を有するメソイミドの還元では98%eeの光学純度でラクタム誘導体が得られた。この還元生成物から適切に官能基変換することにより(+)-ビオチンを合成することができることを明らかにした。
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