研究概要 |
本年度は光学活性らせん状分子の高位体選択的合成法の開発を行なった。7'-メトキシ-2-ヨード-1,1'-ビナフチルと零価パラジウム錯体から発生させたビナフチルパラジウム錯体に対し3,6-ジトリル-1,2-ジイソシアノベンゼンを反応させて得られる光学活性キノキサリンパラジウム(II)錯体を開始剤とし、4,5-ジプロプロポキシメチル-3,6-ジメチル-1,2-ジイソシアノベンゼンの重合反応を行なったところ、ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)が高収率で得られた。円二色性偏光スペクトルを測定したところこのポリマーはほぼ完全に右巻らせん構造を有する光学活性体であることがわかった。このことから開始剤の7'-メトキシ-1,1,-ビナフチル基がらせん方向選択性を完全に制御していることがわかった。さらに、らせん性ねじれを有する4座配位子の合成にあたり、オリゴマーの合成および構造解析を行なった。先と同様の開始剤に対し2等量の4,5-ジメトキシメチル-3,6-ジメチル-1,2-ジイソシアノベンゼンを反応させたところ[トリス(キノキサリニル)]パラジウム錯体が55%の収率で得られた。NMRによる解析の結果、このオリゴマーは100%右巻らせん構造を有していることが明らかとなった。すなわち、重合反応におけるきわめて高いらせん方向選択性は3量体程度のオリゴマーの段階ですでに発現していることがわかった。このように高度な光学活性3次元構造を有する分子はほとんど知られておらず、光学活性配位子へ応用することにより、これまでにない反応性や選択性が得られることが期待できる。
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