研究概要 |
光学活性7′-メトキシ-1,1′-ビナフチル基を有する有機パラジウム錯体を開始剤とした4,5-ジプロプロポキシメチル-3,6-ジメチル-1,2-ジイソシアノベンゼンの重合反応を行なったところ、ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)が高収率で得られた。円二色性偏光スペクトルを測定したところこのポリマーはほぼ完全に右巻らせん構造を有する光学活性体であることがわかった。このことから開始剤の7′-メトキシ-1,1′-ビナフチル基がらせん方向選択性を完全に制御していることがわかった。中間体のオリゴマーの光学活性らせん構造に関する知見を得るために、ビナフチル基上に様々な置換基を有する誘導体の合成を行なった。1,1′-ビナフチル基の2′位にメトキシ基を有する場合、右および左巻らせんはほぼl:lとなり、重合においてほとんどらせん方向選択性が発現しない事実に沿った結果が得られた。興味深いことにこの3量体においては右巻と左巻らせんの間に平衡が存在し、その活性化エネルギーは約16.2kcal/molであった。1,1′-ビナフチル基の2′位にt-ブチルジメチルシロキシ基を持つ場合や、無置換体の場合、左右らせんの比は2:8-1:9程度に向上した。7′位にメトキシ基を有する場合に最も高い選択性が得られ、ほぼ完全な右巻らせん構造の(トリスキノキサリン)パラジウム錯体が得られた。このものにジフェニルホスフィンから発生させたリチウム塩を銀トリフラート存在下反応させたところ、パラジウム部分がジフェニルホスフィノ基に置換された光学活性3級ホスフィンが良好な収率で得られた。また、この条件下、(ペンタキスキノキサリン)パラジウム錯体も対応する3級ホスフィンを与えた。これらの新規光学活性ホスフィン配位子はπ-アリルパラジウムクロリドダイマーとの反応で、対応するパラジウム錯体を与えることがわかった。
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