研究概要 |
16-クラウン-5、19-クラウン-6並びに22-クラウン-7環のトリメチレン中央炭素上に電子供与性側鎖としてオキシキノリン環を有する一連のC-ピボットラリアートエーテルを合成し、その各種アルカリ金属イオンに対する錯形成能を、液液抽出、THF中における錯形成定数、UVスペクトル変化、バルク液膜輸送により評価した。16-クラウン-5では、電子供与性側鎖を導入することにより、アルカリ金属イオンに対する選択性がナトリウムイオンからカリウムイオンへと変化した。19-クラウン-6誘導体ではカリウムイオン選択性、22-クラウン-7誘導体では、ルビジウムイオン選択性をそれぞれ示した。いずれも未置換誘導体に比して、大幅な錯形成能の向上が認められ、側鎖が効果的に配位していることが明らかとなった。 また、新規なC_2対称キラルクラウンエーテルの開発にも成功した。化学合成したtrans-2,12-ビス(ブロモメチル)-2,12-ジメチル-18-クラウン-6をアセチル化後、加水分解することにより対応するクラウンジオールのラセミ混合物を得た。さらにリパーゼ触媒アセチル化反応により、化学収率30%、光学純度>98%eeで光学分割を行なった。その絶対配置は、ジアセチル体を加水分解して、ジオールとし、さらにオキシキノリン側鎖をもつ誘導体へと変換した後、KI錯体のX線結晶解析により決定し、ジアセチル体としては(S,S)配置をとることが明らかとなった。またオキシキノリン誘導体のX線結晶解析結果は、C-ピボットラリアートエーテルで側鎖のカチオンへの配位が認められた最初の例である。予備的な分子認識実験として、この誘導体のナフチルエチルアミン塩酸塩に対するキラル識別能をNMRにより評価したところ、約2倍程度の選択性を示すことがわかった。
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