研究概要 |
本研究は、複数の認識サイトの共同効果により高度な分子認識を達成し得るマルチアンテナ分子の開発を目的として行い、以下の成果を得た。 1.新規非環状三鎖型多座配位子(トリポード)を合成し、アルカリ金属イオンに対する錯形成能を評価した。グリセロール単位を中心の基本骨格に有し、末端に剛直な3つのキノリン側鎖をもつトリポードは、鎖長に応じて形成される空孔サイズに適合したカオチン選択性を示すことを見いだした。 2.二本の親油性側鎖をもつクラウンエーテル誘導体を設計、合成し、アルカリ金属イオン存在下での、空気-水界面でのπ-A変化を測定した。気液界面における当該イオンに対する錯形成挙動は、15-クラウン-5ではNa^+選択性、18-クラウン-6ではK^+選択性を示した。 3.16-クラウン-5、19-クラウン-6並びに22-クラウン-7環のトリメチレン中央炭素上に電子供与性側鎖としてオキシキノリン環を有する一連のC-ピボットラリアートエーテルを合成し、アルカリ金属イオンに対する錯形成能を評価した。いずれも未置換誘導体に比して、大幅な錯形成能の向上が認められた。 4.新規なC2対称キラルクラウンエーテルを開発した。化学合成したtrans-2,12-ビス(ブロモメチル)-2,12-ジメチル-18-クラウン-6をアセチル化後、加水分解して対応するクラウンジオールのラセミ混合物を得、さらにリパーゼ触媒アセチル化反応により、化学収率30%、光学純度>98%eeで光学分割を行った。その絶対配置は、誘導体のX線結晶解析により(S,S)配置をとることが明らかとなった。 5.15-クラウン-5環上の異なる位置に2本のオキシキノリン環を導入した二鎖型クラウンエーテルを合成し、Na^+に対して高い錯形成能と選択性を発現させることに成功した。
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