純物質から液晶ピッチを製造、その基本単位構造を解明するとともに基本単位構造の調節により物性が異なる多数の液晶ピッチの製造に成功した。一般的に溶融下で光学的異方性を示す高分子物質溶融物性または伝熱機構は、分子集合単位のディメンションと形態に影響されることが知られている。液晶ピッチは、2次元の板状分子がVan der Waals力によって積層化した集合単位を有し、さらに溶融状態でもこの集合単位は大きさの変化はあるものの、なお存在することを明らかにした。 ナフタレン、メチルナフタレン、アントラセン等の純物質から製造した液晶ピッチまたはそれの混合ピッチの集合構造を溶融X-ray回折器、透過型電子顕微鏡を使用し、固体および溶融状態のLc(height of crystallite)とd002(画間間隔)の液晶ピッチの集合構造による違いを明らかにした。ナフタレン、メチルナフタレン、アントラセン等の純物質から合成したメソフェーズピッチを互いに混合し、メソフェーズピッチの性状の変化、および紡糸ピッチのナノスケール組織の変化、さらに圧縮強度、弾性率、強度、熱、および電気伝導性の変化について調べた。その結晶メチルナフタレンにナフタレン系メソフェーズを混合することにより、Lcが低下するが紡糸性は良好で不融化反応性は高いことが明らかになった。また、生成繊維中のナノ組織(プリーツ、フィブリル)は微細化していることもわかった。一方、圧縮強度も向上し、ナノ組織の微細化と対応していることがわかった。
|