無尽蔵の太陽光の有効利用は、21世紀へ向けての重要課題の1つである。現在、人工光合成モデルの研究が活発であるが、電子伝達効率の改善が強く望まれている。本研究では、ビピリジン・フェノチアジン・メチルビオロゲンと3官性アミノ酸を連結したハイブリッド化合物とそのルテニウム錯体を合成し、機能評価することを目的とした。 平成10年度は、まず、側鎖に官能基をもつビピリジン類の合成とそれらのルテニウム錯体の諸性質をまとめ、Heterocycles誌に16ページの論文を発表した。次に、ハイブリッド化合物の合成とそれらのルテニウム錯体の機能評価を行った。1.適切に保護されたL-オルニチンまたはL-リシンと側鎖にアミノ基をもつビピリジン、フェノチアジン誘導体、メチルビオロゲン誘導体を、今年度申請した低温恒温水槽を駆使しながら独自の方法でカップリングを繰り返し、目的のハイブリッド化合物を合成した。2.化合物と2倍モルのビピリジンと塩化ルテニウムをアルコール中加熱還流を行い、ルテニウム錯体を合成した。3.錯体はMeCN中460nm付近にルテニウム錯体に特徴的なMLCT吸収帯を示した。4.錯体の発光強度と発光寿命の測定を行い、トリス(ビピリジン)ルテニウム錯体と比較したところ、発光量子収率と発光寿命の大幅な減少が観測された。 以上の結果から、ハイブリッド化合物のルテニウム錯体は、電子伝達効率の良い光触媒となる可能性が示唆された。
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