フッ素の凝集作用を活かした新しいフッ素系分子集合体の構築とその応用に関する研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09650945
• 研究機関: 奈良工業高等専門学校
• 研究代表者: 澤田 英夫 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 助教授 (50259909)
• キーワード: 含フッ素オリゴマー / フッ素の凝集 / 分子集合体 / アクリルアミド / 水素結合 / 抗ガン活性 / ゲル / ポリマードラッグ

研究概要

フッ素の凝集作用を活かすことにより全く新しいタイプの分子集合体を構築させることを目的とし、特に、これらフッ素を有する集合体の興味深い機能を解明させ、フルオロアルキル基の凝集作用が効率よく発現されたフッ素系機能性材料としての新しい分野を構築させることを目的とし本研究を開始させた。
まず、初年(平9〜10年)度においては、フッ素の凝集作用が活かされた新しいタイプの多次元的な分子集合体(ゲル)の開発を行い、次いでこれら新しい含フッ素ゲルのユニークな特性(金属捕捉能さらには抗エイズウイルス活性)の解明も併せて行った。
そこで、本年(平成10〜11年)度においては、フルオロアルキル基が末端に導入されたアクリルアミドオリゴマー類に注目し、これらオリゴマー類の合成さらにはその分子集合体形成能について詳細に検討を行った。その結果、過酸化フルオロアルカノイルをキーマテリアルとすることにより、目的とする新規なフルオロアルキル基含有アクリルアミドオリゴマー類の合成に成功した。得られたオリゴマー類の分子集合体形成について、表面張力測定、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)さらには光散乱法により詳細に検討を行った。その結果、これらオリゴマー類は末端に導入されたフルオロアルキルセグメント間の凝集作用さらには分子内部に導入されたアミドセグメント間の分子間水素結合が相乗的に作用した分子集合体を形成することが見出された。特に興味深いことに、これらフッ素の凝集作用により形成された分子集合体はメチレンブルー等の親水性色素をゲスト分子として特異的に認識することがわかった。
さらに本年度の研究では、5-フッ化ウラシル等の抗ガン活性なセグメントを有するフルオロアルキル基含有オリゴマー類の合成にも成功した。従って、これら抗ガン活性なセグメントを有する含フッ素オリゴマーは、新しいタイプのフッ素系ポリマードラッグとして興味深く、特にこれらオリゴマー類が形成する分子集合体をホスト場とした種々のゲスト分子との相互作用に関する検討は興味深い。
今後は、今回開発された含フッ素分子集合体をホスト場としたゲスト分子としての親水性化合物の認識能とその特異性に関して考察および総括を行うとともに、DNAとの相互作用を明確にさせ、これら新しい含フッ素分子集合体のポリマードラッグへの展開の糸口ともさせたい。

研究成果

• [文献書誌] H.Sawada: "Synthesis and Properties of Fluoroalkylated Oligomers Containing Poly(oxyethylene)Units" J.Jpn.Oil Chem.Soc.47. 685-694 (1998)
• [文献書誌] 川瀬徳三: "フルオロアルキル基含有酸性染料によるナイロンの撥水染色" 繊維学会誌. 54. 26-31 (1998)
• [文献書誌] J.Nakagawa: "Surface Chemical and Solution Properties of Fluorinated Silicon Oligomers with Carboxylic Acid Groups" Langmuir. 14. 2055-2060 (1998)
• [文献書誌] J.Nakagawa: "Molecular Assemblies of Fluorinated Silicon Oligomers with Carboxylic Acid Groups:Effects of Chemical Oligomer Structure on Assembly Shape" Langmuir. 14. 2061-2067 (1998)
• [文献書誌] H.Sawada: "Fluorinated Functional Materials Possessing Biological Activities:Gel Formation of Novel Fluoroalkylated End-capped 2-Acrylamido-2-methylpropanesulfonic Acid Polymers under Non-crosslinked Conditions" J.Mater.Chem.8. 1517-1524 (1998)
• [文献書誌] H.Sawada: "Surface Antibacterial Activity of Fluoroalkylated 2-Acryloxyethyltributylphoshonium Chloride-trimethoxyvinylsilane Co-oligomers" J.Jpn.Res.Institute Mater.Technol.16. 257-261 (1998)
• [文献書誌] H.Sawada: "Synthesis and Properties of Gelling Fluoroalkylated End-capped Oligomers Containing Hydroxy Segments" Polymer J.30. 797-804 (1998)
• [文献書誌] 沢田英夫: "ホスホニウムセグメントを有するフルオロアルキル基含有オリゴマー類の合成と性質" 色材協会誌、. 71. 686-692 (1998)
• [文献書誌] M.Fujiwara: "RD6-2198,a Novel Betain-type Fluoroalkylated Oligomer,Inhibits the Replications of Human Immunodeficiency Virus Type 1 and Other" Antiviral Res.38. 141-149 (1998)
• [文献書誌] N.Terasawa: "Preparation and Characteristics of Perfluorodiacetylene Langmuir-Blodgett Films" Polymer. 39. 5889-5892 (1998)
• [文献書誌] H.Sawada: "Synthesis and Properties of Fluoroalkylated End-capped Betaine Polymers" Eur.Polym.J.(印刷中).
• [文献書誌] 沢田英夫: "フルオロアルキル基が末端に導入されたモノオールおよびジオールセグメント含有オリゴマー類の合成と性質" 日本油化学会誌. (印刷中).
• [文献書誌] 沢田英夫: "フルオロアルキル基が末端に導入されたN-ビニルアセトアミドコオリゴマー類の合成と性質" 材料技術. (印刷中).
• [文献書誌] 沢田英夫: "総合論文:フッ素の凝集効果が発現された新しい分子集合体の構築と応用" 有機合成化学協会誌. (印刷中,4月号掲載予定). (1999)
• [文献書誌] 沢田英夫: "フッ素の凝集効果が活かされた新しい含フッ素高分子ゲルの合成と応用" 高分子加工. (印刷中).
• [文献書誌] H.Sawada: "Synthesis and Properties of Fluoroalkylated End-capped Acrylamide Oligomers" Eur.Polym.J.(印刷中).