フッ素の凝集作用を活かすことにより全く新しいタイプの分子集合体を構築させることを目的とし、特に、これらフッ素を有する集合体の興味深い機能を解明させ、フルオロアルキル基の凝集作用が効率よく発現されたフッ素系機能性材料としての新しい分野を構築させることを目的とし本研究を開始させた。まず、初年(平9〜10年)度においては、フッ素の凝集作用が活かされた新しいタイプの多次元的な分子集合体(ゲル)の開発を行い、次いでこれら新しい含フッ素ゲルのユニークな特性(金属捕捉能さらには抗エイズウイルス活性)の解明も併せて行った。 平成10〜11年度および最終年度においては、フルオロアルキル基が末端に導入されたアクリルアミドオリゴマー類に注目し、これらオリゴマー類の合成さらにはその分子集合体形成能について詳細に検討を行った。その結果、過酸化フルオロアルカノイルをキーマテリアルとすることにより、目的とする新規なフルオロアルキル基含有アクリルアミドオリゴマー類の合成に成功した。得られたオリゴマー類の分子集合体形成について、表面張力測定、GPC(ゲルバーミェーションクロマトグラフィー)さらには光散乱法により詳細に検討を行った。その結果、これらオリゴマー類は末端に導入されたフルオロアルキルセグメント間の凝集作用さらには分子内部に導入されたアミドセグメント間の分子間水素結合が相乗的に作用した分子集合体を形成することが見出された。特に興味深いことに、これらフッ素の凝集作用により形成された分子集合体はメチレンブルー等の親水性色素をゲスト分子として特異的に認識することがわかった。 さらに、5-フッ化ウラシル等の抗ガン活性なセグメントを有するフルオロアルキル基含有オリゴマー類の合成にも成功した。従って、これら抗ガン活性なセグメントを有する含フッ素オリゴマーは、新しいタイプのフッ素系ポリマードラッグとしての応用展開が期待できる。 このように、本研究により開発された新しいフッ素系分子集合体は、フッ素の凝集作用が活かされた新しいタイプの多次元的な分子集合体(ゲル)への展開を可能とさせた。さらに、これら分子集合体が形成するホスト場は特定のゲスト分子のみを認識しうることを示唆し、フッ素化学における新しいホストーゲスト化学のフィルドを開拓しうるものとして今後の研究が大いに期待される。
|