研究概要 |
2H,6H-テトラヒドロ-1,5,3,7-ジカルコゲナジアゾシン1の1,5-位のカルコゲン原子が隣接した構造を有していることに着目し、酸化剤の作用による渡環反応を伴ったジカチオンの形成とその化学変換を検討している。1,5,3,7-ジセレナジアゾシン1bに対するNBSやmCPBAなどの酸化剤の作用では、渡環反応を経て3H-ジヒドロ-1,2,4-ジセレナゾリジン2bを好収率で生成することを既に明らかにしている。本研究では、同族元素である硫黄やテルル体に対する検討を行い、これらジカルコゲナジアゾシンの化学反応性と構造の関係を明らかにすることを目的としている。 硫黄体である2H,6H-テトラヒドロ-1,5,3,7-ジチアジアゾシン1aは既知の方法により合成した。次いで1aに対し臭素を作用させたところ、相当する3H-ジヒドロ-1,2,4-ジチアゾリジン2aは全く生成せず、主成物は6H-ジヒドロ-1,2,3,4,5,7-ペンタチアゾシン3aであった。この系に単体硫黄を添加し反応を行ったところ、3aの収率は著しく向上した。現在種々の酸化剤を用い、3aの収率向上を目指し種々検討している。 一方テルル体の基質となる2H,6H-テトラヒドロ-1,5,3,7-ジテルラジアゾシン1cはセレン体の方法を適用し合成を検討している。1cは酸素に対しても極めて不安定であり、容易に3H-ジヒドロ-1,2,4-ジテルラゾリジン2cと想定される化合物に変換した。現在、立体保護の効果が期待できる1aならびに2aを合成し、X線結晶構造解析によりその構造を明らかにすると共に、1aの酸化反応を検討している。
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